Feeling the language
日本語にはガリガリ、ブーブーなど声や音を表す擬音語(擬声語も含む)、よろよろ、メラメラなど動きや状態を表す擬態語があります。特に擬態語は他の言語に直訳できないものが多く、外国人を悩ます表現でもあります。日本で活躍するアメリカ人の詩人アーサー・ビナード(Arthur Binard)さんは、雨が降れば外へ出てそれが「しとしと」なのか「ざあざあ」なのか、あるいは「ぱらぱら」なのかを体感し擬態語を習得したといいます(ビナードさんの詩集『釣り上げては』は2001年、優れた詩集に贈られる中原中也賞を受賞しました)。
例えば、赤ちゃんの肌はすべすべしています。ひげそり前の肌はざらざらしていて紙やすりのような手触りです。ゆでたまごの表面や凍った道はつるつるしています。「つるつる」は光沢の伴う滑らかな手触りを表します。そのため、ユル・ブリンナーのようなはげ頭も「つるつる」と表現します。魚やカエルの体はヌルヌル、綿菓子はふわふわ。クラゲもふわふわと泳ぎます。
酔っ払うと足元はよろよろ(ふらふらも可)、頭はふらふらです。毛を刈られる前の羊はもこもこ。スエットシャツの上に厚手のセーターを着て、その上にダウンジャケットを着れば皆さんももこもこ感が味わえます。ボールはコロコロ、岩はゴロゴロ転がります。休みの日に横になってテレビばかり見ていると「ゴロゴロしてないで少しは外出でもしなさい」と叱られます。
椎名誠は「刺身偏愛」というエッセイの中で「タコの踊り食い」をこのように表現しています。
「いましがたまで生きていたタコを刺身にして出すと、皿の上で輪切りにしたタコの刺身がのらのらべたべたうろうろと勝手にあっちこっち動き回っているのだ」*
どうですか。お皿の上を這い回る怖いようで愉快なタコの刺身の動きが目に浮かびませんか。
擬音・擬態語は、受ける感覚の微妙な違いをいきいきと描写するのに有効です。宮沢賢治の童話には独創的な擬音・擬態語がふんだんに使われ、読み手の想像力をかきたててくれます。一方、擬音・擬態語は主観に頼るところが大きいため論理性に欠けます。感覚的で原始的な表現方法が幼稚な印象を与えることも少なくありません。三島由紀夫が擬音・擬態語を嫌っていたのは、そんな理由があるからなのです。
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擬音語(ぎおんご):onomatopoeia
擬態語(ぎたいご):mimetic words
状態(じょうたい):state of things, condition
直訳(ちょくやく):direct (literal) translation
悩ます(なやます):to trouble, distress
活躍する(かつやくする):to play an active role
詩人(しじん):poet
しとしと:(rain) softly, gently
ざあざあ:(rain) pouring, shower
ぱらぱら:(rain) sprinkle
体感する(たいかんする):to sense or experience with one’s body
習得する(しゅうとくする):to acquire
詩集(ししゅう):collection of poems
優れた(すぐれた):outstanding, excellent
贈る(おくる):to give, award
中原中也賞(なかはらちゅうやしょう):Nakahara Chuya Prize
受賞する(じゅしょうする):to be awarded a prize
肌(はだ):skin
ひげそり:shaving
紙やすり:sand paper
手触り(てざわり):feel, touch
光沢(こうたく):shine, gloss, luster
滑らかな(なめらかな):smooth
はげ:bald
綿菓子(わたがし):cotton candy
クラゲ:jelly fish
酔っ払う(よっぱらう):to be drunk
厚手(あつで):heavy, thick
刈る(かる):to clip
叱る(しかる):to scold
椎名誠(しいなまこと):Makoto Shiina
刺身(さしみ):sashimi
偏愛(へんあい):favoritism
踊り食い(おどりぐい):eating live fish
いましがたまで:up until now
輪切り(わぎり):slice
勝手に(かってに):on its own, freely
あっちこっち:here and there
這い回る(はいまわる):to crowl around
愉快な(ゆかいな):amusing
目に浮かぶ(めにうかぶ):can imagine
感覚(かんかく):sensation, sense
微妙な(びみょうな):subtle, delicate
いきいきと:animated, active
描写する(びょうしゃする):to depict
有効な(ゆうこうな):effective
宮沢賢治(みやざわけんじ):Kenji Miyazawa
童話(どうわ):story for children
独創的(どくそうてき):creative, unique
ふんだんに:in plenty
読み手(よみて):reader
想像力(そうぞうりょく):imagination
かきたてる:to rouse
一方(いっぽう):on the other hand
主観(しゅかん):subjectivity
頼る(たよる):to depend on
論理性(ろんりせい):logicality
~に欠ける(かける):to lack
原始的な(げんしてきな):primitive
幼稚な(ようちな):childish, unsophisticated
印象(いんしょう):impression
三島由紀夫(みしまゆきお):Yukio Mishima
*椎名誠『麦酒(ビール)主義の構造とその応用胃学』(集英社、2001年)27頁
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