Archive forFebruary, 2006

More subject oddness

主語のようで主語でない

前々回、主語の省略についてお話しました。今回は主語について、多少難解ですが興味深い例を紹介したいと思います。まずは次の2つの文を訳してみてください。

「ぼくはうなぎだ」
「こんにゃくは太らない」

普通に考えると奇妙なこの2つの文章。日本人であれば、この2つがどういう状況で発せられた言葉であるのかは簡単に察しがつくでしょう。

前者は「私はカレーにします」「じゃあ、ぼくはうなぎだ」というように食事を注文する時の言葉で、後者は例えば「ケーキは(食べれば)太るけど、こんにゃくは(食べても)太らないよ」という意味になります。

日本語を外国語として学習していると、「は」は主語をつくるものだと教えられます。「うなぎ文」と「こんにゃく文」を理解するには、そうした用法が、「は」のごく限られた一面でしかないことも覚えておかなければならないようです。

主語では説明のつかない「は」の使い方について例を紹介しますので、参考にしてください。

・ 母は歌がうまい
・ その秘密は言えない
・ 野菜は鮮度が大切だ
・ 高級ワインはうれしい(もらったらうれしい)
・ 事故で夫は助かったが妻は亡くなった

また、「は」「が」以外にも主語をつくるものがあるので、覚えておきましょう。

・ あの人そんな大金は払えない
・ 父愛した小説
・ 警視庁では犯人に関する情報を求めています

(参考:金谷武洋(2002)『日本語に主語はいらない』講談社選書メチエ)

********************
難解(なんかい):difficult to understand
興味深い(きょうみぶかい):interesting
紹介する(しょうかいする):to introduce
訳する(やくする):to translate
うなぎ:eel
こんにゃく:mannan
普通に(ふつうに):normally
奇妙な(きみょうな):bizarre
状況(じょうきょう):situation
発する(はっする):to utter
察し(さっし)がつく:to be able to guess
前者(ぜんしゃ):the former
注文する(ちゅうもんする):to order
後者(こうしゃ):the latter
用法(ようほう):usage
限(かぎ)られた一面(いちめん)でしかない:only one aspect of it
参考にする(さんこうにする):to refer to
秘密(ひみつ):secret
鮮度(せんど):freshness
高級(こうきゅう):high class
亡くなる(なくなる):to pass away
大金(たいきん):a large amount of money
小説(しょうせつ):novel
警視庁(けいしちょう):the police department
犯人(はんにん):criminal
情報(じょうほう):information
求める(もとめる):to ask for

Download audio here.

Comments (5)

Essay Results 1

作文添削へのご協力ありがとうございました。
作文の例を今後少しずつ紹介していきます。

作文例1 訂正前

その記事にかんして、店長批判の的になったのはもっとも思えたことである

知るかぎりでは、店長は何も悪いことをしていなかった。それなのに、「配慮がない」などの批判を受けた。結局は「通報は正しい」の励ましていた声はおおはばに受けたけれでも、書店を閉店させるほど批判が聞こえたのは不思議なことと思う。

店長を事件のことで非難するより子供に対してするべきじゃなかったかもし中学生はマンガ本6冊を盗めば、その行為は店に対する配慮があるものだろうか。そういう子供を育てた親として、配慮があるだろうか。本人たちを除いて、答える立場にないと思う。

現在の社会を見れば、何も悪いことをしない人に向けられた批判の場合が多いと思う。勉強しない生徒より、落第点をあげた先生が批判を受けた。違反した会社ではなく、告発者が批判された。自分で責任を取らずにあちこちに非難する傾向が続けば、将来の世代に対する影響はどうなるか。この姿勢を後世に伝えるのは配慮があるものだろうか。

*********************
訂正後

その記事にかんして、店長批判の的になったのはもっともだと思う

私の知るかぎりでは、店長は何も悪いことをしていなかった。それなのに、「配慮がない」などの批判を受けた。結局は「通報は正しい」という励ましの声がたくさん寄せられたけれども(or励ましの声は多かったけれども)、書店を閉店させるほど批判があったのは不思議なことだと思う。

店長を事件のことで非難するより子供を非難するべきではなかったか中学生がマンガ本6冊を盗んだ場合(or
盗んだら)
、その行為は店に対する配慮があるものだろうか。そういう子供を育てた親は(or も)、配慮があるだろうか。本人たちを除いて、誰も答える立場にないと思う。

現在の社会を見れば、何も悪いことをしない人に向けられた批判が多いと思う。勉強しない生徒より、落第点をつけた先生が批判を受ける。違反した会社ではなく、告発者が批判される。自分で責任を取らずに周りを非難する傾向が続けば、将来の世代に対する影響はどうなるか。この姿勢を後世に伝えるのは配慮があるものだろうか。

*********************
ポイント

「店長は批判の的になったのは」
中学生ではなく店長「が」批判されたことを言いたいなら、「は」ではなく「が」を。

「おおはばに」は大辞林でこのように定義されています:
数量や規模などの変動の差が大きい・こと(さま)。
「―に値上げする」「―な人事異動」

「子供に対してするべきじゃなかったか」
じゃなかったかは話し言葉

「もし中学生はマンガ本6冊を盗めば」
「もし+現在形」は条件を、「もし+過去形」は仮定を表す。英語と同じ。

この場合、「もし」はないほうがすっきりする。

「あちこちに非難する」
「あちこちを」にすれば文法上は可だが、あまり自然な表現ではない。
通常は「周りを非難する」「他人を非難する」という言い方をする。

コメント

言い回しで間違いは多少あったものの、上級の表現が有効に使われ、言いたいことが伝わってくる文章でした。
あとは読書や会話など、生きた日本語に触れて自然な日本語をマスターするだけですね。

Comments (2)

Subject omission

主語の省略

日本語の特徴のひとつに主語の省略があります。
「昨日どこか行ってたの?電話したけど留守だったから」
「別に。ずっとうちにいたよ」

主語の省略は、英語など主語を大切にする言語とは異なり、主題を重視する日本語ならではの特徴です。基本的に「言わなくてもわかることは、いちいち言わない」ということで、これは主語だけではなく「私の」「~さんの」といった所有格にも当てはまります。

ただ、これでコミュニケーションがとれているかというと、必ずしもそうではないことも多いようです。例えば私が子供を連れて公園に行くと、そこで会った人に「おいくつですか」と聞かれることがよくあります。もちろん子供の歳をきいているのですが、うっかり自分の年齢を答えて恥ずかしい思いをしたこともありました。また、主語を省略しすぎたばかりに話がわからなくなり、会話の途中で「誰が何をやった」という確認作業をしなければならなくなるケースもあります。「言わなくてもわかることは言わない」といっても、自分と相手の認識に差はあります。ですから、認識の差を埋めるためにも適度に主語を補ったり、ヒントとして敬語を使ったりしなければなりません。

主語の省略は文章を書くときにも当てはまります。極端な例は古文で、例えば源氏物語は主語がほとんど使われていないことで有名です。文脈や述部の表現で主語を推測すること、つまり「察する」ことが現代以上に求められたというわけです。

*****************************
省略(しょうりゃく):omission
留守(るす):absence from home
別に(べつに):not especially, not really
異なる(ことなる):to differ
主題(しゅだい):topic
重視する(じゅうしする):to value, emphasize
ならではの:one’s unique 日本語ならではの特徴:characteristics that are unique to the Japanese language
いちいち:each time, point by point
所有格(しょゆうかく):possessive
当てはまる(あてはまる):applied to
必ずしも(かならずしも)~ない:not necessarily
歳(とし)、年齢(ねんれい):age
うっかり:unwittingly
ばかりに:because (simple cause brings about negative outcome)
途中で(とちゅうで):in the middle of, on one’s way to
認識(にんしき):recognition
差(さ):gap, difference
埋める(うめる):to fill, bury
適度に(てきどに):reasonably, moderately
補う(おぎなう):to fill in gaps, supplement
極端な(きょくたんな):extreme
古文(こぶん):classical literature
源氏物語(げんじものがたり):Tale of Genji
文脈(ぶんみゃく):context
述部(じゅつぶ):predicate
推測する(すいそくする):to guess
察する(さっする):to infer, take a hint

Download audio here.

Comments (3)

Moving hosts this week

We have already gone over our bandwidth limit, and it looks like we will continue to do so. Rather than paying extra at our current host for more bandwidth, it is a lot cheaper to just move to a host that offers significantly more. So bear with us as we switch everything over, downtime should be at a minimum.

Comments (3)